こんにちは。ノブです。
ランドヌール宮城主催のBRM715宮城1000に参加。今回は実走レポートで、前編・中編・後編の全3編に分けてレポートします。まずは前編。スタートの山形県寒河江市から岩手県宮古市までの約370kmを走ります。
走行データ
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Garmin 走行データ
ブルベ走行レポート
スタート地点:「寒河江市」~94.7km地点:PC1 ファミリーマート松島高城店
快活CLUB天童店で仮眠をし、約14㎞走って最上川ふるさと総合公園に到着したのが、20時20分頃。この公園には寒河江自動車学校が隣接し、その横の駐車場が今回のスタート受付の場となっていました。
最上川ふるさと総合公園に向かっているときに降っていた雨も受付時はほとんど上がっており、ブリーフィングも雨の中とならなかったのは幸いでした。主催の方から天候についての話もありましたが、この時はだれも、あれほどの豪雨に巻き込まれるとは思ってもいませんでした。
※こぼれ話ですが、参加者の方と話をした時、1000kmブルベでは600kmまでをグロス15km/hの通常ブルベのペース、以降が緩くなり400kmを35時間で走る(約11.43km/h)のだと、この時初めて知りました。全行程で平均ペース約13.3km/hという勘違いをずっとしていたので、目から鱗でした(笑)
ブリーフィングの後は車検を通し、あまり密にならない間隔を各々で調整しつつ、スタートしていきます。時刻は21時。遠くで雷の音が鳴り響く中、初日のブルベが始まりました。
まずは東に進路を取ります。点々と続く尾灯の明かりを目で追いつつ、仮眠場所だった天童市を抜け、国道48号線へと入りました。この国道から宮城県の仙台市までは1本道。県境までの関山トンネルまでは緩やかに登っていくことになります。
走り始めは小雨だった雨も、この国道48号線を走っていると強く打ち付けるようになりました。頂上となる関山トンネル手前では麹による渋滞が発生していて、片側通行となっていたトンネルを潜って宮城県へと入りました。
そこからしばらくダウンヒル。雨の降り続く中、暗く長い坂はどこに段差があるか分かりにくく、対向車のライトも視界を奪ってくるので気が抜けません。後続のランドヌールたちに次々と追い抜かれていきますが、とにかく安全重視で慎重に下っていくことを心掛けていました。
長い下り区間を終え、仙台市内へとやってきました。雨は強くなったり弱くなったりを繰り返していますが、中心部に入ると強さを増して水溜まりも大きくなり、信号峠と相まってグロスがじわじわと削られていきます。
中心部を過ぎ、快活CLUB東仙台店の前を通り過ぎましたが、もうリタイヤしたいなぁと弱音も出てくるようになりました。そんな中、その先のJR岩切駅近くの交差点でランドヌール宮城のスタッフさんたちが傘を差して応援に駆け付けてくれてるのを見つけます。
応援を受け、気力が少し戻った気がします。少し先のコンビニでトイレ休憩を兼ねて補給をし、塩竈市へと入った時でした。駅前を通過するときに駅に入っていく一人のランドヌールを見かけます。
「この雨ならDNFも仕方ないよな」と思いながら先に進んで行きますが、彼の選択がこの先の状況を見越したものだったのだと気付くのは、その少し先からでした。
これまで道路にできる水溜まりは深くても2~3cm未満。バシャバシャと水を弾きながら進むだけでした。ですが、溜まっている水の量が明らかに多い箇所が増えてきます。その抵抗は大きく、自転車の走行スピードを一気に削ってくるほどになりました。
徐々にですが、道路が冠水に向かっている兆候が見て取れます。何かがおかしい。
その矢先です。小さなトンネルを抜けた先で、道に土砂が横断するように堆積しているのを見かけました。元々、速度も出ないような状況だったので直前で停車。2~3cmほどの高さの土砂をゆっくりと乗り越えます。
よくよく見てみると対向車線には土砂が大量に流れ込んでいて、道を塞いでいるのが分かりました。その手前には黄色い車体のパトロールカーが停まって片側通行規制を敷いています。
「これは普通の状況ではない。このまま進むべきなのか?」という疑問が頭の中をぐるぐると駆け巡りますが、立ち止まっていても状況は良くならないので、「ひとまずPC1を目指そう」と考えました。
数キロ進んで松島海岸近くになると、状況はさらに悪くなりました。冠水です。道路が冠水して膝まで浸かるほどの深さになっていました。
流石にペダルを漕いで進むことはできず、自転車を降りて、担いだり押し歩きしたりして進むのですが、どうにも塩臭い。どうやら海水も混じっているようです。
ダウンチューブに取り付けてあるツールケースはラップでぐるぐる巻きにしてあるので多少マシですが、ホイールのハブやBBにも海水混じりの雨水が入り込んだことでしょう。ブルベ後のメンテナンスの手間を考えると暗澹たる気持ちになりました。
道には進めなくなった車をチラホラ見かけます。それに何度か「この先は進めるのか」と聞かれもしました。反射ベストを着ていることでパトロールしている人と間違われたのかもしれません。
膝まで浸かる冠水した道路を何度か越え、PC1 ファミリーマート松島高城店に到着したのが、午前1時45分頃でした。たくさんのランドヌールたちが雨宿りしているのが見え、ホッとしたのを覚えています。
94.7km地点:PC1 ファミリーマート松島高城店~160.7㎞地点:PC2 ファミリーマート花泉金沢店
コンビニでレシートを取得し、補給を食べつつ情報交換します。やはり状況が尋常ではないという話が口をついて出てきます。
そんな中、走行していたランドヌール宮城のスタッフさんがPC1に到着。運営本部に状況を伝えているので、しばらくこのPCで待機して欲しいという指示を受けました。
雨雲レーダーを見ると、ちょうど松島近くを赤色の雨雲が通過しているところです。さらに本部からの指示を待っている間に、スマホに緊急速報が流れてきました。警戒レベル5が発令され、身の回りの安全を確保する旨が表示されます。
流石にこれ以上の走行は危険だと、周囲からは「中止だろう」という声が聞こえてきます。しばらくして、運営本部の判断が伝えられました。
「中止はありません。各自の判断で継続、DNFを決定してください」
この決定を受けランドヌールの気持ちは揺れます。早々に出発する者、DNFを決意する者、様々です。自分はといえば、最初は中止がないことに対する疑問もありましたが、次第に中止にしなかったのは状況が変わる可能性があり得るからと思うようになりました。
そこで、雨雲レーダーで雨雲の進路をチェック、道路交通情報サイトから通行止めの道路がルートに存在していないことを確認します。
雨雲が北東方向へ抜ける進路を取っているため、その後ろを追いかけるような形になり、先の状況はまったく読めません。ですが、電車も運休し再開の見込みは不明。コンビニ前の駐車場の水嵩も増え、店内はおにぎりなどが軒並みなくなってきている状況です。このまま留まっていても状況は悪くなるばかりな気がします。
PC滞在から50分ほどが経過した頃、雨が少し弱まってきました。出るなら今しかないと決意し再出発。この判断に正常性バイアスが掛かっていないとは言えませんが、そうした総括は宮城1000のレポートを書き切った最後に行いたいと思います。
さて、ルートはこれまで走ってきた国道45号線から国道346号線に変わります。小さな登りがあり、その先で立ち往生しているランドヌールが2名いました。小規模な土砂の流出の影響か、どうやらパンクをしたようです。そして、再び冠水区間がありました。ちょうどパトロールカーが停まっていたので、この国道の状況を聞いてみると、ここが一番酷く、その先は大丈夫とのこと。
とは言え、状況がどう変わるか分かりません。辺りは街灯がポツポツとありますが全体的に暗いため、前照灯は2本とも点け、とにかく慎重に進むことだけを考え、土砂降りの中を走って行きました。
米山市に抜ける登りを終え(※ここもコンクリ片が道路に流れ込んでいたりと酷かった)、松島のPCから35kmほど走って『道の駅よねやま』までやって来る頃には夜は明け、時刻は午前4時半。雨脚もずいぶんと弱くなり、どうやら雨の峠は越えたようです。
この道の駅で簡易的な機材のチェックをしておきます。BBやホイールから異音は聞こえず、チェーンもオイル切れはなさそうでした。
午前5時過ぎに米山市の石ノ森章太郎ふるさと記念館の前を通過。雨は降ったり弱まったりを繰り返していますが、走行にはまったく支障のないレベルに落ち着いています。
さらに進んで、岩手県一関市へと入りました。次のPCまであと7~8kmといったところです。
160.7㎞地点:PC2 ファミリーマート花泉金沢店~234.5㎞地点:PC3 ファミリーマート花巻桜町店
PC2のファミリーマート花泉金沢店に到着したのが午前6時20分頃。すでに何名か先着して休憩を取っていました。自分は手前のコンビニでトイレに駆け込み、ついでに食事も済ませていたので、レシートを取得したら他の参加者に軽く挨拶をして早々に次のPCへと向かうことにしました。
1時間ほど走って平泉へとやってきました。この『道の駅平泉』は朝6時から朝食が食べられるので出走前は立ち寄ろうと思っていましたが、コンビニ補給でお腹も空いていないので、そのまま先を目指します。
次のPCまでは北上川に沿うような形で県道15号線を北上していきます。奥州市、北上市、花巻市と進んで行きますが、道中にアップダウンはまったくなし。本当にフルフラットな道のりで、車通りも少ないのでとても走りやすかったです。
234.5㎞地点:PC3 ファミリーマート花巻桜町店~322㎞地点:PC4 ローソン釜石駅前店
午前10時頃にPC3 ファミリーマート花巻桜町店に到着。写真が霧のように見えるのはスマホのカメラが曇ってしまっているだけで、視界はクリアです。
PC3は2km先のセブンイレブン花巻高木店との分散PCとなっていましたが、このコンビニを利用する参加者が多かったように思えます。
花巻市からは日本海側へ抜けるために山越えとなります。国道283号線は道の駅が3つもあるので、どこか一つは立ち寄りたいところです。そのために先のPCでは食事は取らず、レシートを取得して早々に出てきました。
ちょうどめがね橋が見えたところに『道の駅みやもり』があったので、昼食がてら立ち寄りました。この辺りの特産は山葵のようです。ということで人気No1と書かれてた『わさびラーメン』を食べてみました。注文から物の数分で出てきたのは、オーソドックスな醤油ラーメン。それに山葵が添えられています。山葵を擦って味変して食べるようで、フワッと香る山葵が新感覚なラーメンでした。
道の駅を出ると、すぐに登りがあり、そこからしばらく平坦区間。遠野市の中心部を通り過ぎてから国道283号線の旧道へと逸れると、仙人峠へと向かう登りが待っています。
ここは難所と考えていましたが、斜度は思っていたよりもゆるゆるで、すぐに頂上となる仙人トンネルに到着しました。
この仙人トンネル。長さが約2.5kmもあります。道幅は狭いのですが、車はほとんど通らなかったので、楽に抜けることができました。
仙人トンネルを抜けた先は釜石市です。長いダウンヒルが続きますが、長雨の影響で道に雨水が流れ込む箇所がいくつもあり、木の枝や小石が散乱している状況でした。いつも下りは制御できる範囲でしかスピードを出しませんが、落車の恐れがあったので、いつも以上に慎重に下っていきます。
旧道から本線に復帰すると道もかなり緩やかになり、JR釜石線沿いを走って釜石市の市街地へと入っていきます。
322㎞地点:PC4 ローソン釜石駅前店~370㎞地点:ルートイン宮古
14時50分頃にPC4 ローソン釜石駅前店へと到着。今日の行程のラストPCです。
ここから先は三陸の海岸沿い。国道45号線を走って行きます。
この道は2019年の日本一周のときも通ったのですが、その時は南下。今回は逆に北上する形になります。そのため、道中に見える景色に見覚えのある場所がいくつもあり、懐かしく思いながら走っていました。
ですが、リアス海岸には特有のアップダウンがあります。流石は三陸といった具合ですが、まだこの辺りの登りは序の口。北上すればもっとキツい区間が待っています。
しばらく黙々と北上し、17時過ぎに宮古市へと入りました。
今日はこの先のルートイン宮古で仮眠を取ります。ホテルに入る前にコンビニで夕食の調達をしていると、ランドヌール宮城のスタッフさんから連絡があり、それは「すべてのPCのクローズ時間を3時間延長する」という内容でした。この救済措置は有り難い。これで心理的にも余裕を持って完走することができそうです。
ルートイン宮古に到着したのが、17時45分。自転車は入り口すぐ隣の倉庫に入れてもらえました。泥だらけになることを見越しPEKOさんのロードバイク靴下は持ってきていましたが、部屋まで運ぶのは手間でしたし、スタッフさんに言えばいつでも鍵を開けてくれるので、これで安心して仮眠が取れます。
大浴場があったので、風呂に入っている間に乾燥機でウェア類は乾かしておきます。
長時間の雨天走行でインナーだけでなくレインウェアもグッショリ。その影響で肌がふやけていたのか、股間回りがパッドと擦れていたようで、お湯が肌に染みて痛かったです。PCのトイレで一度アソスのシャモアクリームを塗り直していたのですが、塗り方が甘かったのかもしれません。
その後、ウェアを回収して19時過ぎに就寝。3時間半の仮眠を想定してアラームをセットして目を閉じると、すぐに睡魔に襲われ眠りに落ちました。
ブルベレポート前編はここまで。中編となる2日目は、このブルベ一番の難所となる十和田湖へと向かいます。
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