こんにちは。ノブです。
いつもはサイクリングをメインにした旅ブログを書いていますが、ちょっと脱線。これから書こうと思っている『馬×サイクリング旅』のための下準備として、今回は今年から新たに取り組んでいる『引退馬支援』についてのお話です。
競馬にハマるきっかけはウマ娘
それは2021年の1月頃のこと。どうやら『ウマ娘』というソシャゲが満を持してサービス開始されるらしい。ですが、それを聞いても何が凄いのかピンときません。それもそのはず。社会人になってからはゲームをすることもなくなっていたし、アプリ内課金を行うゲームは胡散臭いと一切手を付けていませんでした。
でも、アニメもあるらしく無料で見られるので、まあどんなものかと見始めたのが運の尽きだったわけです。1期はスポ根要素もあってそこそこ楽しめたなという印象。そして、そのまま2期を視聴して、見事にやられました。こんなにボロボロ泣いた作品はこれまでになかったかもしれません。
そして、どうやら、このウマ娘の物語は史実に基づいているのだと知ります。ハマった作品はその背景をとことん追求したくなるのがオタクというもの。その史実を調べるうちに、競走馬には白熱する戦いや悲しい出来事があることを知り、今ではそこそこという評価をした1期にすら泣けてしまうくらいに競走馬の持つ物語にハマっています。
元々、父が好きで競馬中継はなんとなしに見ていたし、エンジニアとして競馬に関わる仕事もいくつかしており、お馬さんのお陰でお給料をもらっていたこともあったのに、その馬たちにこんなストーリーがあったなんて思いもしませんでした。ずっと、競馬=ギャンブルという視点でしか見てなかったんだなと目から鱗が落ちる思いでした。
引退馬を知るきっかけはナイスネイチャのバースデードネーション
競馬に対する新たな視点を得たことで、その界隈の解像度がグンと向上。そんな中、2021年の4月ごろに、とある活動をSNS上で目にします。
それは『ナイスネイチャ バースデードネーション』と呼ばれる活動でした。ナイスネイチャは、G1勝利こそないものの、有馬記念の3年連続3着などブロンズコレクターとして人気を博した名馬です。そして、ウマ娘にも実装され、人気を博しています。
どうやら、引退馬を支援することを目的としたクラウドファンディングで、ナイスネイチャはその広報部長になっているようでした。ウマ娘効果もあってその年は3500万円もの寄付金が集まり、自分も少額ながら出資しています。

そして、そのバースデードネーションの発起元がNPO法人引退馬協会でした。この引退馬協会との出会いをきっかけに引退馬の現状を知ることになります。
引退馬と取り巻く現状
日本では、年間約七千頭ものサラブレッドが競走馬として生産されています。そして、その多くが4~5歳で現役生活を終えることとなります。結果を残した馬たちには繁殖の道が開かれ、その血を繋ぐことになりますが、それはごく僅かです。
年間で競走馬として登録が抹消される馬は地方・中央競馬を合わせ約1万頭にも上ります。その多くは乗馬として用途変更されることになりますが、日本にある乗馬施設にも限りがあり、到底受け入れられる数ではありません。
馬の平均寿命は20~30歳。では、その行き先はどこか。
この話は素人の自分がするよりも、引退馬問題を考えるサイト「Loveuma.(ラヴーマ)」に詳しく載っていますので、そちらご参照ください。


また、業界関係者のインタビューで構成されたドキュメンタリー映画『今日もどこかで馬は生まれる』も、その現状をとてもリアルに、そして分かりやすく伝えてくれます。
人によってはかなり衝撃的な内容だと思いますので、心して視聴するようにしてください。
上記は予告編ですが、本編は2022年10月現在、AmazonプライムなどでSVOD配信されていますし、Apple TVなどではペイパービュー形式で購入視聴も可能。
ひとまず画質に拘らずどんな映画か見てみたいなら、netkeibaTVでは会員登録の必要もなく無料で配信されていますので、こちらもオススメです。
引退馬を支援するとは?
引退馬を知ってからの1年で、競走馬たちは牛や豚と同じ経済動物でありながら、少し歪な状況におかれていると感じるようになりました。
競走馬たちは願いを込めた名を与えられ、そして一般観衆の前に登場し、決死の思いで走る姿を見せることになります。それは強い馬であっても弱い馬であっても、誰かの目に触れ、心に残るきっかけとなるわけです。
そうして人の心に残った馬たちが、人知れずに消えていくというのは、なにか違う。ただ、そのなにかが未だに分からずにいます。
ただ、一つ勘違いして欲しくないのは、馬は愛玩動物ではないということ。肥育に回って食用や飼料となったとしても、それはただ殺して廃棄しているのではなく、命を最後まで有り難くいただくということです。それも含めて競走馬という産業は成り立っているわけで、殺すことを悪だと解釈するのは違う気がします。
すべての馬を生かすことはできません。だから、死して他の生き物の血肉となる馬たちにも敬意を払っていきたい。馬肉を食べる機会があれば、ちゃんと美味しくいただいてあげたいと思っています。
感情的に可哀想だからと助けるのは、なにか違う気がします。
引退馬協会の会員になった
引退馬を支援することは、いわばある種のエゴではないのか。行かす命とそうでない命の選別ではないのか。それが正しいことなのかどうか分からず、そんな考えをグルグルと巡らせ、気が付けば1年が立ち、再びナイスネイチャのバースデードネーションの季節がやってきていました。

この引退馬支援において、正しいかどうかという答えは永遠に出ないのでしょう。余生を送るチャンスのある馬がそこにいて、その余生を支える機会が目の前にある。それだけです。
この頃には競走馬に対する関心度はさらに高まり、実際に馬産地へ赴き、そこに暮らす馬や人たちに会ってみたいと考えるようになっていました。ただそれは観光でちょっと訪れるというよりも、もう一歩踏み込んだ形で関わりたい。そう思い、引退馬協会の門を叩く決意をしました。
さて、引退馬協会には一般会員、フォスターペアレント会員(FP会員)、賛同会員、後援会員の4つの会員種別があり、自分はFP会員になりました。
FP会員では、引退馬協会が所有するフォスターホースを直接支援することができます。G1ホースなどの人気馬に支援が偏ることになりますが、”支援口数の多い馬が少ない馬を養う”互助システムとなっているので、その点も安心できます。

また、FP会員になることにより、引退馬の近況レポートが月毎に貰えたり、ボランティア、総会へ参加資格が得られる他に、引退馬と直接触れ合える機会が与えられます。これは牧場見学の際に非会員とは別枠に設けられることが多いので、より深く引退馬を知り、牧場のスタッフさんから話を聞く機会が得られるという点も魅力でした。
フォスターペアレント制度の運営は、引退馬協会の活動の大きな柱です。会が所有する馬を「フォスターホース」と称し、会費、寄付、助成金収入など、多くの人で支え合うことにより、馬を安定した環境の中で終生大切に繋養します。
フォスターホースたちは、ただ養われるだけではなく、触ったり、餌をあげたり、手入れをしたり、乗ったり・・・直接ふれあい、その温もりを感じ、心を通わすことができる存在でもあり、馬に対する知識や理解を深める役割も担っています。
NPO法人引退馬協会のWebサイトより
引退馬協会への入会は複雑ではなく、インターネットから申し込むことができます。より詳しく知りたい方は、NPO法人引退馬協会のWebサイトをご確認ください。
支援中の引退馬について
こうして引退馬協会のFP会員となったわけですが、現在、支援をしている引退馬は2頭です。簡単にですが、どんな子たちなのかご紹介します。

ナイスゴールド
ナイスネイチャの初年度産駒で、生涯成績は5戦0勝。骨折が原因で引退し、以降は乗馬として活躍してましたが、乗馬引退後は紆余曲折ありながらも生産元である渡辺牧場さんに引き取られ、引退馬協会のフォスターホースになっています。
ゴールドを支援しようと思ったきっかけはシンプルで、引退馬支援の仕組みを教えてくれたナイスネイチャに感謝を込めて、その産駒であるナイスゴールドを支えようと支援を決めました。
タイキポーラ
トウカイテイオーを父に持つ牝馬で、中央では32戦7勝。主な勝ち鞍はGⅢのマーメードSです。繫殖牝馬として働いた後、「トウカイテイオー産駒の会」の紹介により引退馬協会のフォスターホースとなりました。
トウカイテイオーはとても好きな馬でしたし、ナイスネイチャの父であるナイスダンサーはトウカイテイオーの母の父にあたります。これも遠からぬ縁と考え、ポーラを支援することにしました。
今後について
散々悩みましたが、NPO法人引退馬協会に入会し、新しい活動をすることにしました。ひとまずは馬産地である北海道へ伺い、そこで暮らす馬たちと触れ合い、引退馬を支援することとは何かを楽しみながら学んで行きたいと思います。
差し当たって、今年の9月と10月に、アポイントを取って引退馬に会う機会に恵まれました。今後は自転車で巡る馬産地訪問記として、その様子をブログにまとめていきたいと思います。

付録:NPO法人引退馬協会以外の支援先
最後に。引退馬支援の取り組みは少しずつ広がりを見せています。NPO法人引退馬協会だけが支援先ではありません。今回はそうした活動をいくつかピックアップしてみました。興味のある活動があれば、ぜひWebサイトを覗いてみてください。
TCC(Thoroughbred Community Club) Japan
JRAのトレーニングセンターのある滋賀県栗東市を拠点とする引退馬の支援施設です。いわゆる乗馬クラブではなく「人と馬の福祉」をテーマにしており、その一つが障害を持つ子供達と馬とが触れ合うホースセラピー。高齢となる引退馬でも活躍のできる場を作り出し、人と馬とが共存できる社会づくりを目指しています。

NPO法人ホーストラスト
「馬の救済」「環境保全」「地域貢献」を3本の柱とするホーストラストでは、馬が自然界で暮らすのと同じような環境を整備し、その広大な用地を活かした自然放牧が基本スタンスとなります。
広さと頭数のバランスを保ちつつではありますが、厩舎ありきの養老牧場に比べ、多くの引退馬を受け入れることができる点が画期的で、NPO法人ホーストラストは鹿児島にありますが、その理念に共感したホーストラスト北海道が新たに誕生しています。

yogiboヴェルサイユリゾートファーム
元宝塚トップ女優だった美雪花代さんが経営するヴェルサイユファームから、引退馬を引き取る分場として開業し、養老牧場でありながら一般客向けの宿泊棟のある、引退馬と共存するための新しい試みを行っている施設です。

また、人をダメにするソファーで有名なYogiboとネーミングライツ契約を結んでおり、最近では、そのソファーに引退馬のアドマイヤジャパンが気持ちよさそうに寝そべる姿が反響を呼び、約1,000万円のCM契約を受注したことでも一躍有名になりました。
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