こんにちは。ノブです。
日本では、毎年約7,000頭ものサラブレッドが生まれ、そしてその多くが競走馬となって旅立っていきます。
ですが、競走馬としての期間は短く、引退後は種牡馬となって血を次につなげたり、乗馬となるなどセカンドキャリアを生きることになります。その役目を終え、サードキャリアとして養老牧場で余生を送る馬たちもいます。
そんな引退競走馬たちを見学する機会があるのなら、見てみたくなるのがファンというもの。ただし、相手は生き物。彼らに会うためには、覚えておかなくてはいけないことがたくさんあるのです。
今回は馬産地を旅するために必要なルールについてまとめていきます。
何はさておき『牧場見学の9箇条』を確認しよう
まず、馬産地を観光目的で訪れることはできますが、そこに広がる牧場は観光地ではありません。馬の生産育成を生業とした会社です。
例えば、あなたが会社員だとして、会社の敷地に赤の他人がいきなりやってきたり、その周囲をうろうろされたら不審に思いますよね。また、あなたの会社が見学を許可し就活生が訪問してきたとしても、勝手に社内を動き回られたり、開発中の商品に許可無く触れられたりしたら、どうでしょうか。ルールが守られないなら、次回は中止にすると判断するかもしれません。
https://uma-furusato.com/info/entry-59629.html
牧場は観光地ではありません。牧場のご厚意によって見学が許されているわけで、見学するためには知っておくべきルールがあります。それが『牧場見学の9箇条』。これは牧場見学を行う上での最低限のルールです。
『競走馬のふるさと案内所』で見学におけるルールを確認しよう
馬産地で牧場見学をするためにはどうするべきか。馬産地にある牧場のほとんどが、馬の生産・育成などを生業とする会社であり、一般の見学を受け付けている牧場はごく僅かです。
電話番号やメールアドレスなどが牧場のWebサイトに記載されていたりしますが、それらは同業者向けに公開されているだけであり、観光を目的とした一般の人が安易に連絡を取って良いわけではありません。
では、どうやってアポイントを取るか。それを確認するには、『競走馬のふるさと案内所』の存在が欠かせません。この競走馬のふるさと案内所が一括して見学方法を取りまとめています。
なので、見学してみたい馬がいるなら、まずは競走馬のふるさと案内所のWebサイトにある『馬・牧場・施設検索』から見学可能かどうかを確認すること。さらに見学方法や注意点を詳細に把握したい場合は、案内所に電話などで問い合わせたり、現地にある案内所を訪ねて確認することが望ましいです。
さらに、競走馬のふるさと案内所Webサイトには、『牧場見学の計画手順』が掲載されており、その手順を丁寧に解説しています。まずはこちらを確認することをオススメします。
また、競走馬のふるさと案内所や馬産地周辺の観光案内所などには、『牧場見学のルール&マナー』という冊子が無料配布されています。
この冊子には『牧場見学の9箇条』はもちろん、馬産地見学のアドバイス、牧場見学のアドバイス、これまであった見学による迷惑・苦情内容、馬産地情報のメモなどが重要な情報がまとめられています。こちらも必ず読むようにしましょう。
牧場見学中に気を付けたいこと
こうして見学のアポイントが取れたなら、いよいよ現地での見学です。指定された時間に訪問し、案内に従って、焦らず静かに行動しましょう。
『牧場見学の9箇条』や『牧場見学のルール&マナー』に掲載された内容を守るのはもちろんですが、実際に牧場見学をした際に気になったことを挙げていきます。
牧場独自のルールもしっかり守ろう
各牧場では『牧場見学の9箇条』以外にも注意事項(例えば、見学ルート厳守、動画撮影禁止、SNSへの投稿禁止等)を設けている場合があります。そうした情報も『競走馬のふるさと案内所』で確認できますので、しっかりと頭に入れておきましょう。
お目当ての馬が必ず見られるとは限らない
牧場見学方法は大きく分けて2パターン。放牧中の馬を柵越しに見学するか、厩舎の中にいる馬をその外から見学するかで、どちらになるかは時間帯や天候等によって変わります。
特に厩舎見学の場合、馬が顔を覗かせるのをひたすら待つことになります。見学客に興味津々になって時間いっぱい顔を出す馬がいる一方で、我関せずとお尻を向けて黙々と食事をする馬もいます。
見学時間には限りがありますし、相手は生き物。お目当ての馬が最後まで顔を出さないなんてこともあり得ます。見られたらラッキーくらいの心積もりで見学に臨みましょう。
馬には決して触れない、餌を与えない
『牧場見学の9箇条』は馬産地を守るための必要最低限のルールです。ですが、マナーを守れない人が後を絶ちません。
目の前にいるのは、現役の種牡馬や引退した功労馬です。億単位で賞金を稼いだ馬もいます。その馬たちには所有者がおり、あなたの馬ではないのです。決して触らないようにしましょう。ましてや餌を与えるなんて問題外です。その辺の草を毟ったとしてもダメです。餌を与えたいなら許可されている観光牧場へ向かい、指定の餌を買って与えてください。
過去には功労馬のたてがみを切ってメルカリで売るという悪質な事件が発生して逮捕者が出ていますし、馬パラチフス(流産を引き起こすサルモネラの一種)などの伝染病は、人も菌の運び役となり得ます。「ちょっとくらい」「どうせバレない」と安易に行った行為が、最悪の事態を招く可能性があるのだと、心に留めておいてください。
敷地内では走らないこと
見学時間が限られていることへの焦りなのか、お目当ての馬見たさに走り出して現場スタッフから注意を受けている人を目にすることがあります。
走ることも馬を驚かせることに繋がるため、敷地内では決して走らず静かに行動するようにしましょう。
スマホはマナーモードに
これは牧場見学のルール&マナー冊子にも掲載されていますが、見学時は携帯はマナーモードにしましょう。これは実際に目撃したことですが、写真撮影目的で近づけていた見学者のスマホから急な着信があってビクッとなった馬を見ています。
馬はとても繊細な生き物です。些細なことで興奮させてしまうこともあるので、細心の注意を払うようにしてください。
お墓参りの際は食べ物をお備えしない
また、競走馬に関連する施設・公園などには競走馬の墓碑が作られている場所もあります。人の管理の行き届く屋内にある祭壇であれば、食べ物を許可している場合もありますが、お墓は基本的に屋外にあります。
匂いにつられて野生動物がやってくる可能性がありますので、食べ物ではなく献花にとどめておくのがよいでしょう。
サイクリストが馬産地・牧場見学の際に気をつけるべき点
このブログは自転車ブログですので、ここでは、サイクリスト目線で牧場見学を行う際に気を付けた方がよいと感じたことをまとめていきます。
馬産地をサイクリングする際の注意点
道中の写真や動画撮影について
馬産地を走行していると、自転車で走る姿が珍しいのか、結構な頻度で馬たちに目で追われます。キョトンとした姿は可愛らしいのですが、近くに寄って写真を撮らない方が賢明です。それらは馬主のいる預託馬である可能性があり、それをSNSに投稿してしまうことで、牧場の管理問題に発展する可能性があるという話を聞いています。
遠くから景色として撮る分には問題ありませんが、馬の特徴が判別できるほどの近距離での撮影およびSNSにアップするのは控えるようにしましょう。
安全走行を心がけよう
馬産地の景色は雄大で、馬がのどかに暮らす姿は見ていて飽きません。そのためにキョロキョロと周囲を見回し、路面状況の確認を疎かにするなんてことになりかねません。走行には十分な注意が必要です。
また、馬は基本的に臆病な生き物です。日常的に慣れてしまえば気にせず草を食んでいますが、自分の知らないもの、音には特に敏感です。自転車の場合、例えばディスクブレーキは甲高く音鳴りすることもありますので、馬産地では急ブレーキをしないよう安全走行を常に心がけましょう。
銅像や石碑に自転車を安易に立て掛けない
名馬の銅像と石碑に直接ロードバイクを立てかける姿が目撃され、現地の住民から以下のような苦情が出ています。馬産地には集客を目的としたモニュメントではなく、感謝や鎮魂などの思いを込めた場所もあります。記念に愛車と一緒に撮りたいのは分かりますが、場所はわきまえましょう。
そこがどんな場所なのかは『競走馬のふるさと案内所』で確認すれば分かります。訪れる前にチェックです。
馬産地の方からLINEでとある名馬の銅像と石碑に直接ロードバイクを立てかける写真が送られてきました
— SUOMIAAKI@C101【1日目め21b】 (@suomiaaki) October 24, 2022
石碑や銅像は関係者やファンの方が馬への様々な気持ちを込めて建てられたものです。安易にロードバイクなどを立てかけていいものではありません
そこら辺のご理解もよろしくお願いいたします
牧場見学の際の注意点
見学前にトイレは事前に済ませておこう
牧場は市街地から離れたところにあることが多く、自転車で向かうとある程度の距離を走ることになります。ルート上の公衆トイレは事前にチェックしておき、向かう前に済ませるようにしてください。防疫やコロナ対策という観点から、牧場はトイレを貸すことはありません。
サイクルラックはありません
基本的に牧場にサイクルラックはありません。自転車は牧場の敷地内に持ち込めませんので、指定された駐車スペースの脇に停める事になります。都合が良いからとスペースからはみ出して牧柵に立て掛ける等しないようにしてください。
歩きやすい靴を準備しよう
自転車旅にSPD-SLといった専用のシューズを使っている方もいると思いますが、歩きにくいのが難点です。転倒すれば自分が怪我するだけで無く、馬を驚かせることにつながりかねません。
自分の場合、馬産地を訪れる際は最初からフラペにするか、履き替え用にもう一足持参する様にしています。
補給食は持っていかないように
馬は甘いものが大好きです。封を切った羊羹の袋だとかは甘い匂いがしますので、匂いのするものを身につけておかないようにした方が良いです。もちろん、見学中に食べるなんてことはご法度ですので、バックポケットの補給食も置いておくようにしましょう。
訪問時は必要最低限の荷物で
リュックやサコッシュなど紐状のものは注意が必要です。牧場によっては牧柵まで近づくことが許されている場合もあります。そのときに悪戯好きの馬がいつの間にか近づいて、リュックの紐を引っ張るなんてことがあり得ます。万が一の事態にならないよう、牧柵に近づくような場合は荷物は背負わない方が無難です。
まとめ
馬産地特有のルールとマナーを守ろう
決められたルールを遵守し、馬を第一に行動すること。それが馬産地訪問および牧場見学における重要なポイントです。
牧場見学は牧場のご厚意によって成り立っています。マナー違反をすれば中止になりかねません。特に無断訪問や見学時に馬に触れるというような行為は絶対に慎んでください。
馬との出会いは一期一会
現在、日高管内にはウマ娘 プリティーダービーの等身大パネルが設置されており、新規の牧場見学者が増えることが見込まれています。
https://www.hidaka.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/hidaka-umamusume.html
馬の寿命は20歳から30歳程度。見学可能な馬たちは現役を引退しており、どの馬も高齢です。健康そうに見えても翌日には天寿を全うしてしまうなんてこともあるわけで、そうした馬たちとの出会いは、いちファンからすれば一期一会。
せっかくの機会なのですから、その姿を目に焼き付けるつもりで見学に臨んで欲しいと思います。きっと記憶に残る旅になるはずですので。
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